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体だけではなくて脳の発達なども一緒だからだと思うのですか。
逆に成長する前ぐらいに無理をさせてしまうと、今度はからだの成長がうまくいかないから、あとが大変だし、教えるときにも抑え込んでしまうと絶対だめだということはすごく言っていましたね。
U)もうひとつ面白い会話をしたことがあるのです。
僕に向かって、「自分が数学をやっていてちゃんとした数学者になれたと思うか」、と質問されたことがあるんです。
僕が、「最初からきちんとした教育を受ければある程度の数学者にはだれだってなれる」という話をしたら。
「いや、音楽家でも一緒だ」と言われました。
だから、きちんとしたステップを踏んで教育していけば、天才は別ですが、少なくとも音楽をきちんとわかって弾けるようにはなるということをしきりにおっしゃっていました。
いままでのお話に一貫しているのはそこなんですね。
みんなしかるべきそれなりの才能はもっているから、それを引き出していって教えていこうということですね。
ただ、それはものすごく根気が要る仕事であることと、もう一つは先生自身かものすごく音楽を知ってなかったらできないのではないかという気がしますよね。
C)プロになる場合はもちろん、プロ、アマチュアを問わず、いつでも教えるほうも習うほうも、親御さんの忍耐が絶対必要なのです。
危険な言い方ですが、技術を完璧にマスターするのは、だれだってやろうと思えばできる。
たとえば学校も行かずに朝から晩まで、食事と寝る以外練習すれば、そこまでにはなる。
しかし、多くの知識だけを教え込まれて。
先生の言ったとおり、お母さんの言ったとおりやってできていたわけです。
「それが違うよ」、とか「そうなんだよ」とか、言われていることだけしか詰め込まれてないから、自分で考えるということかできない。
初めて自分の足で社会に出たときに、自分自身で考えることができないからそこでつぶれてしまう。
父はそういうものには絶対させたくないと言っていました。
U)それについては私もレッスンのときいろいろお話を聴いたんですが、あるとき、どういういきさつだったか前後は忘れてしまったのですが、たとえば江藤俊哉先生や黒沼ユリ子先生は自分にないものをもっている、技術の問題ではないのだ、とポツンとおっしゃったことがありました。
たとえば日本の弦楽器の教育がすごく進んでいると言うときに、日本はテクニックの教育はすごく進んでいると誤解されているけれども、H先生はそうではなくて、テクニックはあくまでも自分のもっているものを表現するための手段であって、ほんとうの音楽はテクニックだけではないのだということをしきりに強調されていたと思うのです。
C)テクニックは教えられても、音楽的な表現を教えるのは難しい。
表現力というのは、ある程度自分の感情のあらわれだと思います。
まず人間をつくらなければいけないとよく父は言っていました。
そこで音楽を表現するときに、曲をひとつとっても、時代とか、曲風とか、作風を教えて、「その歌い方は変だよ」などと言うことはあっても、あくまでその曲をどう感じるか、それをまずその子から引き出す。
それがすごく難しいと言っていました。
それを表現するための手段がテクニックなのだけれども、テクニックはどれだけ訓練して量をこなしたかによって決まるのだということを言っていました。
U)もうひとつH先生は、ほんとうに日本の音楽のレベルか上がるためには、一部のプロ、できる人が出てくるだけではなくて、全体のレベルが上がらなければいけないのだとしきりにおっしゃっていましたね。
別にプロになる人だけでなくて、だれでも教えるという姿勢、S先生もたぶんそうだったと思います。
それは日本の音楽教育のなかにそういう考え方があるのですか。
それともH先生をはじめ、一部の先生の考え方なんでしょうか。
C)それは人によるかもしれませんね。
でも、教える人に対しては、プロを目指しているか、そうでないかは考えていなかったのだと思うのです。
自分は教えるプロだから、だれにでも教えるんだということだと思うのです。
U)僕もいちばん最初のときに、三〇歳を過ぎて始めましたから、「別にプロになるわけでも何でもないから適当に教えてください」と言ったら、えらい怒られて、「自分はプロとかアマとかぜんぜん区別しないのだ。
自分が教えられることは全部教えるが、それをできるようになるかどうかは本人次第だ」と言われました。
C)もしその子がよくできるようになってプロになりたいとなったら、そのときにそのためのシステムを考えればいい。
教える時点でこの子はプロにしよう、この子はアマでいいだろうということを考えてしまったら、教えるプロではないと言っていました。
R子)だけど、初めに、途中でやめるのだったら初めからこないでください、やらせないでくださいとは、よく言っていましたね。
C)それに父の場合、ひとつの指導法、考えに基づいてやっていますから、違う考え方、習い方だと、父の考え、やり方に直すのに時間がかかりますし、そこで悪いくせがついてしまっていたら、それをとるのが大変なので、途中からの人はあまり受け入れていませんでした。
R子)いちばん大切なことはやり続けるということですね。
よくやり続ける子はたとえば受験のときも絶対休まない。
勉強しながら細く長くでも練習を続ける。
それで受験が終わったらまた一気にやりだす。
だから、休むとか、中途でやめてしまうということをいちばんいやかっていましたね。
C)【受験のために一年間休みます」と言われたときに、父は「あ、そう」で終わるんですけど、その子が帰ったあとに、「受験のために一年レッスンを休まないとできないような勉強だったら、学校もうまくいかない」と言っていました(笑)。
「受験のために休みます、また終わったらきます」といって、来たためしがないと。
「きょうぐらいは休んだほうかいいんじゃないか」というぐらいのほうが勉強もうまくいくようです。
「自分がいま何をやらなければいけないか」「気分転換も大切だ」ということかわかってきたのだろうから。
U)あくまでも本人の自主性がいちばんの基本で。
それかなかったらだめだということでしょうね。
R子)学生時代から続いていま会社の中堅どころになっているような人たちは、仕事も大変ですけど、なんとか練習時間をつくり出して続けていますからね。
やっぱり会社のほうでもきっと頑張っているだろうと話し合っていました。
C)一つがだめでこっちが完璧にできるということは絶対ありえないですね。
U)ありえないですね。
一つかできなかったらほかもできないということはあると思いますね。
最初にレッスンを受けたときびっくりしたのは、まずプロもアマも区別しないということなのですが、もう一つ、練習曲を弾いていて途中で失敗してやめちゃいますよね。
やめると「なぜやめる」とすぐ怒られる。
普通の先生だったらそれだけだろうと思うのですが、H先生はいつも「演奏会のときだったら途中でやめるわけにいかんぞ」つて言われるんです。
だから、失敗したらいかにして失敗を克服するか考えろと、最初から言われていました。
C)楽器を弾いている以上、レッスンの時も、コンサートホールであれ。
どんな小さいところでも、人前で弾くということはいつも本番だと思えと言っていました。
まちかいを恐れずに、一回弾きだしたものはめちゃくちゃでシャンと終わってもいいから、とにかくその曲の最初から最後まで弾き通せ。
弾き通す力、何かをひとつの目的をもってやり通す力をつけるようにと言っていました。
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